OPINION

佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」㉑

佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」㉑

佐藤将 コラム

21.とある次世代の情景(四)

同じ景色を見ていても
まったく違うものを見ていたり
まったく違うことを考えていたり
まったく違うことを感じていたり

同じ事実に対し
まったく違う解釈をしたり
まったく違う文脈をつけたり
まったく違う感情を呼び起こしたり

もしかしたら
文化が違えば大きく違って
もしかしたら
世代が違えば大きく違って

でもそれは、とても人間的なことで
でもそれが、この世界のルールで

だから
対話することが大事で
だから
相手の靴を履く事が大事で
だから
笑顔を忘れないことが大事で

***********************

場所:チリ サンチャゴ
日時:2019年5月
情景:世界ラウンドテーブルの中の一幕

テーマは、「チリの歴史から学ぶリーダーシップ」。

17~19世紀、チリ原住民のマプチェ族をどうスペインが支配していったかという話が続く。

「関係性(リレーションシップ)が出来たことで、パワーバランスが崩れた」
「友達関係(フレンドシップ)を持ったがために、マプチェ族は支配された」

(えっ?...)
どういう事???
何か理解が難しい...
恐らく、こちらが普段、ポジティブに使っている言葉を、ネガティブな文脈で使っているからだ。

「リーダーシップは、パワーを使って他者へ影響力を与えることだと言われてきたが...」
「相手にどんな影響を与えているかを意識しないリーダーシップは罪だ」

(えっ!)
頭がグニュとする。
周りの受講者を見ても、皆、???の表情...
明らかに我々の理解はついていっていない。

現地で英文学を教える米国人のアリソン教授。
ヒッピー文化の影響を受け継ぐ彼女の「フレーム」は明らかに違う。

けれど、南アフリカから参加したエルフィーだけは違った。
黒い肌に美しいカーリーヘア。
受講者の中でも最年少のミレニアル世代。
その大きな瞳を爛々と輝かし、何か話し出す。

すると、アリソンと共鳴し合い、二人で涙を流し始めた。
呆然と見守る他の受講生たち。

一瞬にして、その場に、一体感が生まれた -

***********************

場所:東京 都内
日時:2010年前後
情景:街中を歩いている中での一幕

今から10年ほど前の事。
当時住んでいた家の近くに、一件のお店が出来た。
(なんだろう、このお店?)
立ち止まって中を見る。

若い20代の子たちが作業をしている。
何か熱心に、打ち込んだように。
(えっ、お店?作業場?)
お店のドアを見ると、
「鞄修理・バッグ修理」と書いてある。
(へえー、こんな繁華街に...)
(でも修理屋さんで儲かるのかな...?)

それから毎晩、
そのお店の前を通る時、
少し歩調を緩めて中を覗く。
(何か楽しそうだな...)

その内、気づく...
(昔の職人さんみたいだけど...)
(でも、若いお弟子さん達という感じでもない)
(何か誇りを感じる、何か芯を持っている感じがする...)
(何か見たことのない若者たちだな)

二週間ほど経った頃、
勇気を出して中に入ってみる。
「この鞄、修理したいのですけど...」

それをきっかけにお店のコンセプトを聴く。
「僕たちが目指すのは、単に修理ではなく...」
「モノを大切に使い続ける文化を取り戻すことで」
「僕ら若者が、そういう時代を創っていかなくてはいけなくて」
「お店のコンセプトは、昔のロンドンにありそうなお店ですけどね」。

体内を、爽やかな風が吹き抜けた -

**********************

場所:英国 ロンドン
日時:2012年 初冬
情景:金曜日の夕方、パブでの一コマ

その年、初めての雪が降った日。
同じチームのメンバー達とパブで一杯飲む。
その日のメンバーは、なぜか英国だけでなく、EUや英国連邦の国々から集まった20代の女性メンバーが中心だった。

一杯飲み終わる頃、最近始まった日本企業のプロジェクトの話になる。
彼女たちにとって、日本企業のプロジェクトは初めて。

「どうだった?」
今週数回あった顧客ミーティングの感想を訊ねる。

「噂通り、日本企業はシニオリティね」
「(顧客サイドの)ミスター○○は、一言も話さなかったわ」
「大学院(LSEというロンドンにある名門高)で、日本企業は、"パワーディスタンスによるマネジメント"と習ったけど、それは本当だったわ」

(ふーん、日本的経営って、そういう文脈で語られているのか...自分が若い頃は賛美されていたのに、今は昔だな...)
(うん?...僕のマネジメントにもそういう兆候があるのかな。気をつけねば!)

「でも、とてもストラクチャードされていて、効率的に見えるわ」
(決して相手を否定しすぎない、それなりの知性の持ち主たち...)

「でも、どうして若い日本人は、あんなにクールなの?」
(えっ?)
「そうそう、とってもクールだわ!」
「そうそう、私が去年日本を旅行したときも...、私の友達の彼氏の○○も...」
次々と賛同の輪が生まれる。

(どういうこと?)
当時、日本国内では、やれ「温和しい、内向きだ、ガッツが足りない」などと言われていた20代が、彼女たちには、違って映っている。

確かに、当時出会った日本の若者たちは、ロンドンに集まってくる次世代グローバリストたちとは何かが違うものの、別の凄いポテンシャルと強烈な印象を与えていた。その何かを、上手く言葉に出来ないけれど...

その夜の帰り
古い街並みの石畳の上には
白いカーペットが敷き詰められていた。

その上に、オレンジ色の街灯の灯りが、ぼんやりと映っていた -

**********************

場所:チリ サンチャゴ
日時:2019年5月
情景:世界ラウンドテーブルの中の最終日

一週間のプログラムが終わった最終日。
エルフィーと同じく南アフリカから参加者で、
ギフティド・スピーカー(才能ある溢れる語り部)のコーシャーが、
講師陣へお礼の言葉を述べる。

冒頭は、アリソン。
まるでゴスペルの歌声のようなコーシャーの声が響く。
「あなたは、ボイス・オブ・ボイスレスだわ」と。

その時、すべてが繋がった。
「そうか、それが僕の...」

最近わかったんだ、なぜ日本の次世代がクールなのか、その一つの理由を -

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