OPINION

  • 佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑯

    佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑯

    佐藤将 コラム

    16.もう一つの、この世界(II)

    ≪前回より続く≫ 

    先日、イスラエルとのオープンイノベーション・セミナーに参加する機会を得た
    (参考記事
    )。

    イスラエルからやってきた連続起業家(Serial Entrepreneur)のお一人が、
    「イノベーションで一番大事なものは」と問いかける。
    「技術」
    「情報」
    →「ノー」。

    「インスピレーション!」
    「パッション!」
    →「ノン」。
    (・・・)

    「どれも大事だよ」
    「けれど一番大事なのは・・・」

    「出会った瞬間からお互いにリスペクトし合い」
    「"I am a functional specialist"というサイロから出て」
    「自分に対してモデスト(謙虚)」
    「対話を通して誰も持ってない新たな発想を生み出す・・・」
    「"We are a Team!"というカルチャー(組織風土)だ!」。

    ***************************

    あの日、ロンドンブリッジ近くのオフィスでチームになったのは、極めてエキゾチックなミレニアル達だった。
    右隣はイランから来たという。真正面は、パキスタン出身で英国育ち。左横はフランス人だがロシア育ち。英国人は1人しかない。他テーブルを見渡しても、似たような状況だ・・・
    (余談:いずれ東京もそうなるのかな)。

    最初、焦った。
    「イランって、どんな文化だ?」
    「パキスタンって、どこだ?」
    「フランス人だけど、ロシア出身って??」
    「そもそも英国に来て間もないし・・・」
    (ステレオタイプでの異文化対応ができない!!)。

    迷っている間もなく、アサイメントが与えられる。
    「我が社のコアバリューに従った場合、この状況でどう判断し行動するか?」
    限られた時間内に、チームで対話し、発表せよという。

    その瞬間、スイッチが入った。

    ***************************

    最近、日本で次世代リーダーシップ研修をしていて気づいた。

    対話には、少なくとも3つのタイプがあることを。
    1) 経験の共有を通して自身の感情や固定観念に気づく「内省的」対話
    2) 限定した時間で誰もが持ってない新しい知を生みだす「創造的」対話
    3) 相手の靴を履き感情を移入同化する中で一体化する「共感的」対話

    恐らく、上述の「ザ・チーム」には、三つの対話のすべてが必要だろう。

    私見ではあるが、日本のミレニアル世代(20代)は、「内省的」、
    海外のミレニアル世代は、「創造的」。

    ただ、どちらも、羨ましいぐらいに、「共感的」(Empathetic)だけど。

    ***************************

    森の中で感じる、すべてがつながっている感覚。

    そこで感じるのは、アイデンティティではない。
    前世紀的な"近代的自我"というラベルを貼ることでもなければ、
    狭い"自分らしさ"という檻の中に押し込めることでもない。

    あの日、
    多国籍チームの中で、
    スイッチが入った際に感じたのは、
    「肌の感覚が消えていく」感じだった。

    自分を規定するシールド(盾)がなくなっていく・・・
    自分を守るべきバリアー(防御壁)が消えていく・・・

    同じ目的に向かって、
    お互いの過去も未来も関係なく、
    その場に溶けていく。

    けれど、個々人の顔や表情が消えることはなく、
    お互いのポテンシャルが交錯して共感が生まれ、新しい何かが生まれていく。

    ***************************

    ロンドンブリッジ近くのオフィスからは、テムズ川が一望できた。

    テムズ川の流れを見ながら、何度か思った。
    人生は、川の流れに沿って生きるのがいいのか。
    逆らって生きるのがいいのか・・・

    ある朝、テムズ川の上流、「あのタワーブリッジ」の先に、美しい朝陽が昇るのに気づいた。

    その時、ふいに後ろから声がした。

    「どちらだっていいのだ」と。
    「いずれにしても、重力があるのだから」と -

    ***************************

    そう遠くない未来、多くの新世代(ニュー・ジェネレーションズ)が、国家や民族、宗教を越え、チームでつながれたら・・・ひとり一人が、アイデンティティ(近代的自我)に目覚めながらも、それを越え、「エンパシー」や「コンパッション」でつながれたら・・・

    グラス片手に乾杯しよう
    「もう一つの、この世界」に。

    ≪シリーズ二部完結≫

  • 佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑮

    佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑮

    佐藤将 コラム

    15.もう一つの、この世界(II)

    ≪前回より続く≫ 

    かつて、外国を旅する目的は、新しい世界を知ることだった。
    今、ミレニアルズ(若手世代)が「この世界」を旅する目的は、何なのだろう・・・

    ***************************

    かつて、ネパールの王様は、国民に映画を見せなかったと言う。
    「そんな事をしたら、自我が目覚め、自己実現のスケールをアップしてしまうだろう」。

    今、日本という国で、
    NPO法人を立ち上げた教来石さおりさんは、
    カンボジアをはじめとした途上国の村の子ども達に青空映画館を届けようと語りかける。
    「映画が、子ども達の夢を見る力をはぐくむから」(
    )。

    ***************************

    最近、次世代リーダーシップ研修で突出してくる一群がいる。
    大学時代、NPOやサークルでボランティア活動をしていた方々だ。

    自分と深く対話をするワークも、
    未来ビジョンを語るワークも、
    恐るべき感性と説得力で迫ってくる。

    それだけではない・・・
    他者に配慮して、スムーズに会話を盛り上げる。
    共振共鳴で、周りの胸の鼓動を高めていく・・・
    静かに、確実に。

    最近、世界のミレニアル世代では<当たり前>になりつつあるスタイルだけど・・・
    それにしても・・・
    何かが違う!

    ***************************

    かつて、ニューヨークやLA、ロンドンで出会った海外の若者達も優秀だった。
    そのセルフエンジンや向上心、
    アウトプットのスピード感は、
    「さすが」と思わせるものがあった。
    それ以上に、
    若くしての独立心や発信力は、
    「フュー」と言わせる爽快さがあった。

    今、次世代リーダー研修で、
    ヨーロッパ圏やドバイ、シンガポールなどからやってくるミレニアル世代は、
    それに輪をかけて、
    多国籍チームでは当たり前の
    フラットな対話連携型リーダーシップが身に付いてくる。
    自然なエチケットとして。

    でも何かが違う。
    何かが違うんだ・・・
    何だ?

    クールだけどおとなしいと言われて来た日本のミレニアルズから、
    『何か新しいリーダーシップ』が生まれている。

    「もう一つの、この世界」が・・・

    ***************************

    21世紀、世界は、ますますグローバル化していくだろう。

    それは、従来の、国家や宗教、民族をベースにした"私たち"のアイデンティティを脅かす。
    その反動で引き起こされる摩擦、ハレーションが、今、極めて悲惨な形で起きている。

    それに対して、
    「自分たちに、できることがある」、
    「自分にも、やれることがある」、
    と言って、手を差し伸べる若者がいる。

    その行く先は、
    遠いアフリカの飢餓から、
    日本の難民受け入れ問題まで様々だけど・・・

    「同じ可能性にあふれた若者たちの未来が、生まれた境遇によって阻まれているなんて・・・地球の未来にとってもったいない!」(激化する民族紛争や宗教対立で祖国を追われた方々を支援するWELgeeを立ち上げた渡部清花さん)(

    彼ら彼女たちの「旅」の源泉にあるのは、単なるパッション(Passion)ではなくコンパッション(Com-passion)。

    21世紀、市場原理主義が<当たり前>となったこの世界で、「神の見えざる手」で救えない社会課題に対して、自然に、しなやかに、「人の手」をさしのべる。

    --「もう一つの、この世界」--

    ***************************

    この世界のグローバル化は、同時に、
    近代産業社会(インダストリー)を前提としたユニット単位の、
    "我が社"というアイデンティティを変質させていく。

    産業革命以降、
    長く近代人が依拠してきた
    「組織によってインスティテューショナライズされることで、アイデンティティを保つ」
    という<当たり前>の価値観(外壁)が、崩れていく。

    それに気づいた日本のミレニアルズが、
    自分たちで新しい動きを始めた。

    かつて、海外経験は、
    イコール、留学、海外トレーニー、海外出張、海外駐在などであった。

    けれど、
    今、企業に入る前に、
    職業を選択する前に、
    ギャップイヤーや夏休みを活かして、
    世界各地のベンチャー企業でインターンとして働く。

    それも、
    インドやアフリカ、南アジアといった新興国を中心に。
    電子マネー&スマホなど、いきなり21世紀インフラが出現する地で。
    近代産業社会の<当たり前>(ドグマ)をスキップしてくる世界で。
    未来の社会課題が山積みの、もう一つの世界で。
    この世界の「新しい若者たち」(ミレニアルズ)と共に働く。

    「少子高齢化しても、"自分たち"が、虎になればいい。"世界中の人たち"とつながればいい」(タイガーモブ代表菊池さん、今年度第16回女性起業家大賞特別賞受賞)(

    --「もう一つの、この世界」--

    ***************************

    先日、「映画配達人ツアー」()でカンボジアを訪れた後、来年海外インターンをするという高校1年生、小林なつみさんに出会った。

    「カンボジアに行って、わたし達、先進国の人が幸せで、彼らが不幸というのは違うと思った」。
    「高校生になって、ますます将来のことで悩むことが多かったけど・・・」
    「自分たちの世代は、職業を見つける前に、自分が本当にしたいことを見つけることが大切だと思いました」。

    ミレニアルズの「旅」の目的は、もはや産業社会(セカイ)の中での居場所(ジブン)探しではなく、21世紀、無限の選択肢がある中での、自分やこの世界の可能性(ポテンシャル)探しなのかもしれない。

    ―「もう一つの、この世界」ー

    ***************************

    先日、若手リーダーシップ研修の一環で、森の中で自己探求を行った時の事。
    ナビゲーション役である一般社団法人「森と未来」のメンバーの方から、お題が与えられる。

    「この森の中で、あーこれが自分自身だ、と思うものを探してきてください」。

    受講者に混じって探す。
    あれか、これか・・・
    やっと見つけて、グループに戻る。

    「なるほど」、「明確」。
    お互いの選んだものに納得。
    最後、自分が選んだものも説明。
    自分でも、納得・・・

    っと、その瞬間、
    それまで森の中で感じていた感覚と違うことに気づいた。

    「あっ」、突如、ある出来事がよみがえる。
    ロンドンブリッジの袂でのこと。

    「あーそうだったのか・・・」 (次回に続く)

  • 佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑬

    佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑬

    佐藤将 コラム

    13. いつかいた森

    「森と聞いてあなたが思い浮かべる森は?」
    ――この世界、たくさんの森があるけれど、あなたが思い浮かべる森はどこの森ですか?その景色、その空気、そこにいた感覚を思い出してみてください――

    昨秋、はじめて『森のワークショップ』に参加する機会を得た。
    集合場所は、京王線で新宿から50分の長沼という駅。
    (意外に近いな)
    集合時間ピッタリに着くと、参加者の皆さんが待っている。
    (、、、)
    しばらく田んぼの中の畦道を通ると、小さな祠のある神社に着く。
    山の麓、森のエントランス。
    そこで荷物を下ろして体操。

    その時、森からの風が、少しひんやり湿った風が頬を撫でる。
    (あっ!)
    (どこかで感じた感覚、、、)
    (そうだ!子どもの頃によく遊んだあの森の感覚、、、)
    その時、その頃の風景や友達の顔が、数十年ぶりに、思い出される。
    (こんなに早くからデジャブ感、、、)
    先が思いやられる「森の世界」。

    ***************************

    日本という国は、
    テンプレ的には、海に囲まれた「島国」。
    東の果て、大陸からの流浪人(refugees)が集まった「隠れ里」。
    明治以降は、海外との通商で稼ぐ「海洋国家」となった。

    けれど、ワークショップ主催者の小野さん(一般社団法人森と未来 代表理事)によると、国土の7割以上が森林。森林率ではトップ3に入る、実は世界有数の「森の国」であるという。
    (確かに山林地帯が多く、川は急流だな、、、)
    (日本人は、本来、森の民族だったのか、、、)

    ***************************

    <再び森>
    森に入ると、五感を一つずつ開くワークから始まる。
    (鳥のさえずりが5重奏になる、、、)
    (風の音が聞こえる、、、)
    (懐かしい匂いが、、、)
    (空気を肌に感じる、、、)
    そして、身体中の神経が安らいでいくのがわかる。

    ****************************

    日本の森は、
    確かにドイツの森ほど、暗く深淵で魔法使いがいそうな雰囲気はない。
    英国の森ほど、朗らかで妖精が出てきそうな気配もない。
    米国の東海岸に比べたら、四季の抑揚は滑らかだ。

    けれど、そのほどほどの四季感と、
    雨季や台風による豊かなウエット感が、
    何か神秘的な雰囲気を与えている。

    森羅万象、八百万(やおろず)の神信仰は、
    そんな風土から生まれたのだろう。

    「神々と共にある森」。

    ****************************

    <再び森>
    森の中を歩きながら、様々なワークが用意されている。
    繊細なこころ配りされたデザイン。
    自然に、いや自然以上に、「森の世界」に入っていく。
    (うん、週末のハイキングとは明らかに違うな)

    ****************************

    日本人が持つ特性の一つに、
    サブトル(Subtle)なものへの感度の高さがある。
    微細な変化、見えない機微(Kibi)に対して、
    繊細(Sensitive)で、鋭敏(Keen)な感覚(DNA)がある。

    侘びさび文化だけではない。
    ものづくりにおいても、以前、その力は十分に発揮されてきた。

    ****************************

    <再び森>
    森の中を歩いていると、
    別の世界に放り込まれていく感覚がある。
    この世界とあの世界の狭間の世界に。
    (あー、ここは結界なのか)

    自分の中の潜在意識のゲートが開かれていく・・・

    ****************************

    最近、グーグルをはじめとしたシリコンバレー企業で、マインドフルネスやEQマネジメントが人気だという。管理職研修もそのウエイトが大きくなっているという。
    10年前にはあまり聞かなかったエンパシー(感情移入)をはじめ、レゾナンス(共振・共鳴)からコンパッション(共苦・同苦)まで、センスする力=「センシング力」が、新しいリーダーシップの中核となっている。恐らく、脳科学的に、センシングを使う脳のCPUが、思考(シンキング)だけに比べて、格段に大きいのであろう。

    本来、それは日本人が、圧倒的なアドバンテージを持っていた部分。
    それが、いつの間にか、インダストリー社会の中で分断され、MBO(目標管理)を達成するパーツ(部品)として思考(シンキング)優先になってしまってはいないだろうか。

    ****************************

    昨年、東京で開催されたRRT(リフレクションラウンドテーブル)世界大会。

    その初日のハイライトは、内省と対話に関するクロストークであった。登壇者は、リーダーシップ論の権威でRRTの生みの親のお一人ゴズリング教授、シリコンバレーでも禅や瞑想法に関して数多くの講演経験を持つ藤田一照禅師、そしてこの森のワークショップを手がけておられる小野なぎささん。弊社小森谷さんの進行で進む。

    最初、ゴズリング教授が、リフレクション(内省)とは、思考の蝶つがい、紙を折る感覚に近い。「日本人の内省力には、「折り紙」文化が影響しているのでは?」と問う。

    その難しい問いに、藤田禅師が間髪入れずに応える。
    「昔、日本の看護婦さんが、サンフランシスコのある病院に短期体験でいらした時の事。一人の男性患者が、病気で自暴自棄になって大暴れしていたという。言葉も上手く通じなかった彼女は、その彼に近づき、持っていた紙で、折り鶴を折ってみせたという。その瞬間、彼は、『マジックだ!ミラクルだ!』と言って、周囲の人に見せて周り、自然に穏やかになった」との事。

    それを聞いた小野さん。「人類が森で生活していた時代は、人も生物も木々も、すべてが繋がっていた。現代になって都会で生活していると、ノイズ(訳:雑音、固定観念)によってディスコネクトされてしまっている。だから、私たちは新たに繋がるのではなく、ただその昔持っていた繋がりを取り戻す、リコネクトするだけでいいのだ」と。

    紙という2次元の世界が、折り紙になって3次元に、そして人の心を介してさらに高次元に繋がった瞬間。

    もし、私たちが、内省や対話を、思考(シンキング)だけでなく、「センシング」で捉えられれば、「我が社の問題はコミュニケーション」という企業は大幅に減るだろうと思う。

    ****************************

    <再び森>
    森を散策した後、囲炉裏のある古民家で、絶品の焼鳥や麦とろ飯を食す。素材も素晴らしいけれど、こちらの五感も開いているので、格別に美味しく感じる。
    その後、木の香り溢れるロッジで、対話セッションを行う。普段、都会で行う対話(どちらかというとシンキング系の対話)とは違うセンシング系の対話。

    その後、16時現地解散。17時前後には都心に戻る。
    少し次元の違う世界にいたせいか、とても長く充実して感じた1日。はじめて出会った方々と共に語らいながら帰路につく。

    その日、最寄り駅のホームに降り立った時、まだ明るい夜空に一番星が輝いていた。

    予想していなかったよ。21世紀の未来の革新(ルネッサンス)の鍵が、いつかいた森の中にあったなんて -

    ****************************

    ――あなたが思い浮かべた森はどんな森でしたか?――

    注)文頭、文末の問いは、一般社団法人森と未来さんのセミナーから特別に引用させていただきました。


  • 佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑨

    佐藤将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑨

    佐藤将 コラム

    9.君島、まんが、いきなり世界だよ(急)

    ≪前回より続く≫

    「映画のようなワンシーン」

    東京の地下鉄はその正確性で有名だけど、だからと言って、海外の地下鉄で起きる偶然のハプニングも悪くない。

    その日、ロンドンの地下鉄は1時間近く立ち往生した。
    初夏の金曜日、
    夕方のラッシュアワー、
    オリンピック準備のためという車内アナウンス。
    でも、さすがロンドンっ子、
    皆、何事も起きていないかの如く、
    手持ちの本やキンドルに集中している。

    ようやく動きだし、
    ウインブルドン・パーク駅(※
    参照)に到着する。
    と同時に、一斉に降りた乗客が、駅の階段を駆け登る、
    いつもより小走りで。

    その時、群衆の中を一人の男性が、駆け上がっていった。
    恐らく20代後半、金融街で働く真面目そうな紳士。
    彼が通り過ぎる際、なぜか、ふと目が合う、
    0コンマ数秒で交わす無言の挨拶。

    階段を上りきり、小さな改札を抜ける。
    テニスの大会前の、いつも静かな駅、
    初夏の空は、もう群青色に染まっている。

    いつものように駅を出てすぐ左折する。
    っと、その瞬間、
    (???)
    先ほどの若い紳士が、かがんでいた。
    見ると、彼の目の先には大きな毛並みの良い犬。
    (!)
    その数メートル後ろ、
    シャッターが降りた駅の売店の片隅には、
    憂いに満ちたアンニュイな女性。
    二人?を見て、
    安堵の笑みを浮かべる。

    時間が止まったように感じた瞬間、
    そこにいっさい、言葉はなかった、
    ただミュージックだけが流れていた。

    ************************

    いつからだろう?

    言葉こそがコミュニケーションだと思い込んでいた。
    言葉にして伝えることが、異文化を越える、グローバル・コミュニケーションだと思い込んでいた。
    もしかしたら、そう思い込むことで、この世界で楽に生きようとしていたのかもしれない。

    「そうだったのか・・・」

    ウインブルドンの丘を登る坂道、仰いだ夜空に青い月が輝いていた。

    *************************

    最近、日本企業のグローバル研修をしていて、一つの変化に気づいた。

    かつては、「カルチュアの違い」がコミュニケーション・ギャップの理由、或いはエクスキューズとなる傾向が強かった。今でも、ある世代以上になると、日本人、外国人を問わず、その傾向は強い。

    ただそれが、新世代になると「ジェネレーションの違い」に移る。

    「文化の違いですか??」
    「・・・うーん、あまり気になりませんね」
    「それより問題は、世代の違いです」
    「上の世代は、私たちの世代を理解していない」
    「にも関わらず、自分たちの旧いマネジメントを押し付けてくるんです」
    「育った環境が違うのに、経済環境も、グローバルも、インターネットも・・」
    「それに人生の価値観も違う」。

    *************************

    今から10年後、世界の労働人口の75%、4人に3人が、「ミレニアル世代」と呼ばれる1980年〜2000年に生まれた人々で占められる(現在は15歳〜35歳→10年後は25歳〜45歳)。

    既に多くの海外企業が、その世代を意識したマーケティングを開始。同時に、人類史上、最もクリエイティブと言われるその世代を活かすため、様々なマネジメントの取り組みが始められている。

    一方、日本では、10年後のミレニアル比率は36%、約3人に1人強になる。世界平均の半分以下、国内でも圧倒的なマイナリティであるせいか、本来、金の卵として扱われてもおかしくない、彼ら彼女たちに対する取り組みは、一部の先進企業でしか取り組まれていない。

    5年後、10年後、世界で仕事するための準備、できていますか?

    ************************

    かつて、グローバルは、本国で売れたものを、段階的、国別に「外国」に持っていくことだった。
    けれど今、グローバルは、「いきなり世界」の時代。

    当然、グローバルにおけるリーダーの考え方も変わってくる。

    以前、「グローバル・リーダー」とは、「資本主義xグローバル化xネットワーク化」で生まれる<新しい秩序>や<システム側>のリーダーとなっていくことを意味した。

    けれど、近年は、逆に、巨人化するグローバル資本主義の中で生まれる歪みや格差、超管理社会(ディストピア)化が進む中で叫ぶ誰かの声に応えるために<マルチチュード側>や<社会起業家的>なリーダーになることが、特に若い世代を中心に、広まった。

    これからは、その近代的二項対立を越え、<両者をつなぐ立ち場>のリーダーが必要になってくるのかもしれない。その立ち場に、世界で最も一番近い位置にいるのが、日本の新世代(ニュー・ジェネレーションズ)。年齢に関わらず、その可能性を持った人々に出会う機会が増えた。

    いずれの選択にしても、これからのグローバル・リーダーに求められる要件は、『文化や世代を越えるコミュニケーション力』。

    それは、討論や多数決で片をつけるようなモダン(前世紀的)なコミュニケーションではない。ましてや軍事力や権力を背景にした交渉や圧力でもない。

    もっと人間的なダイアローグ。
    多様な世界だからこそ覚醒される、言葉を越えた五感のダイアローグ(ミュージック)。

    ************************

    小学校4年生が終わった春休み。
    担任の盛岡先生の田舎に、クラスのみんなで遊びに行った。
    神戸からローカル線に揺られて1~2時間。
    そこは、まるで、まんが日本むかし話で見たような山里。
    先生のご実家でお昼をご馳走になった後、近くのお寺でドロケイをした。

    楽しかった。
    夢中だった。

    あの時、まだ知らなかった、未来が想像を越えていくことを、
    ・・・数えきれない偶然(Happenings)こそが、人生の必然(Constellation)であったという運命(Fortune)を。

    *************************

    もしかしたら、21世紀、「この世界のリーダー(グローバル・リーダー)」とは、国境の壁(Border)を越えていける人ではなく、自分の運命だと思っていた運命(Border)を越えていける人なのかもしれない。

    もし、この世界の誰もが、運命(Border)を越え、運命(Fortune)とつながれるのだとしたら・・・21世紀の現実が、まんがの世界を越えていく、のかな。

    「君島、おまえ、間違ってなかったかもな」


    ≪シリーズ一部完結≫

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