開かれた思考、開かれた心、開かれた意志による企業変革
【Diane Boulet Professional Coach, Organizational development Consultant】
ダイアンさんには、ブラザー・カナダでの取組みをもとに、どのように組織風土を変革していくのかについてお話いただいた。
組織がサイロ化し、個人間も部署間も互いを理解できていない状況の中で、
コーチング・アワセルブズをベースに、12ヶ月におよぶマネジメントプログラムを実施した。
目的は、理解の文化、共感の文化をつくろうというものだった。すぐに関係性が変わってきた。
マネジャー同士で一緒にランチをし、一緒に問題を考え始め、内省の内容を日誌に書くようにした。
その上で内省とは何かという話もした。
組織横断でのセッションも行い、一緒にモントリオールの企業訪問にも行った。
他の組織はどのように協働しているのかを学ぶことができたという。
最後にエッセイを書いてもらったが、いろいろなフォーマットがあった。
戦略計画のようなもの、詩のようなもの、絵のあるもの・・・。
そこには彼らなりのありたい組織像が描かれていた。
50人のマネジャーが5グループに分かれて実施してきたが、最後に、こんな言葉が出てきたのだという。
「内省的になった」
「わたしではなく、わたしたちになれた」
「チームの大切さ、絆の大切さがわかった」
「他の部署がどう協働しているのか、どう変わったのか、興味を持つようになった」・・・。
オペレーションもマネジメントも、根底に流れるものは、つながり、喜び、組織を人間的なものにすること。
そのためには次の4つのレベルの取組みが必要であるという。
第一レベルは、習慣的に聞くこと、ダウンロードすること。
第二レベルは、相手に注目し、事実に気づく。開かれた思考を持つこと。
第三レベルは、心を開いて聞く、相手の立場で聞くこと、開かれた心を持つこと。
第四レベルは、生成する、未来の最善の可能性と、最高の自己について知るということ。開かれた意志を持つこと。
最後に、彼女自身が自分とどう向き合っているのかを語ってくれた。
釣りや石を集めることが趣味なのだそうだが、これは内的な環境に目を向けることになるという。
自分はどういう存在なのか、より良い存在になっていきたい、よいマネジャーになっていきたい。
そんな気持ちと向き合う大切さを語り、締めくくってくれた。
Coaching Ourselves in Action
【Maarten Van Thiel Organizational development Consultant】
マーティンさんは、オランダでチェンジマネジメントを軸にコンサルティングを行っている。
彼はまず、会場の参加者に、チェンジが何を意味するのか、思ったことを書き出して欲しいといった。
その上で彼は、自分の経験の話から初めた。
自分が組織変革を担うマネジャーになったとき、大学の教授と毎週、1on1で話す機会がつくったのだという。
彼からは何も質問をしてくれなかった。ただ話してくださいというだけだった。
わたしが家族の中で、周囲の中でどのような存在なのか、わたしはいったい誰なのか。
この内省と対話の経験を通じて、自分がコミュニティの一部であることに気づかされた。
ここでの気づきと教わった哲学を組み込んで、チェンジ・プロペラという概念をつくった。
コミュニティシップをつくり、社員間の関係性をつくり、迅速かつ機動的に変化へアプローチし、内省的実践を行う。
これを構造的なマインドセットの変化と行動的なマインドセットの変化が軸になり、プロペラを回すという発想だ。
そのためにまずやるべきは、コミュニティシップをつくること。関係性に力を与えること。
組織を変える、自分自身を変えるのであれば、関係性に何らかの力を与えなければならないという。
そこで導入したのがコーチング・アワセルブズ。
非常に安全な方法で、論理的な構造をつくることができる、お互いがつながることができる。
転換点をみつけ、チェンジ・プロペラを回すことができるようになる。
その一つの事例として、航空会社KLMフランスの事例を上げた。
Connect & Lead People Programというもので、キックオフ、2日間4回のセッション、最終セッション。
その間にグループワークを実施しながら、変革へと導くプログラムである。
各チームは、次の4つのテーマについて検討を進めた。
①勇気とエッジ、②コネクト、③フォーカスとビジョン、④起業家精神と自立性。
オープンスペースのような場でセッションを行いながら、サイロをつないでいくことに力を入れたプログラムだった。
Young Professional Development というプログラムも実施した。
若手層にフォーカスし、コーチング・アワセルブズを用いて、
各人が強みやコンピテンシーをイノベーションや生産性、モチベーションなどとつないでいく活動を行った。
これにより、各人の強みやコンピテンシー開発がさらに進み、内部でのネットワークも広がっていった。
関係性に力を与えることで、組織が大きく変わりだした事例だと説明してくれた。
長期的な変革を支援するためには、意味ある内省と対話と行動を創造しよう
<Beverly Patwell Organizational development Practitioner, Consultant>
ビバリーさんは、「コーチング」のテキストをつくった人でもあり、カナダで組織開発コンサルタントとして初期の段階からコーチング・アワセルブズをともに育ててきた人である。
「文化は人だ。でも、文化は変えることができる」と語り、文化の変革というテーマで、コーチング・アワセルブズがどう結びついていくかについて、二つのケースをもとに話をいただいた。
最初に、持続可能なリーダーシップ開発のフレームワークとして、
①アラインメント(段階を設定し、目的を明確にする)、②インテグレーション(カスタマイズし、統合する)、③アクション(学習と洞察、行動を呼び起こす)、④インパクト(ビジネスの成果、関係やコミュニティの構築)の4つのステージを示してくれた。
このアクションにおいて、コーチング・アワセルブズが重要な役割を果たしているという。
そこで実際の事例として、オタワ市での取組みを紹介してくれた。
サービス・エクセレンス・リード・プログラムというもので、素晴らしいサービスを生み出そう、急進的なことをやって団結力を高めようと、文化変革という意図を持ってスタートした。
最初はシニア・マネジャーたちの研修から始め、オタワ市全体が関わったプログラムとなった。
どこでも仕事が出来る時代、テクノロジーをどう生かすか、どう人をつなぎ、コミュニケーションを活性化させるかなどを議論した。2、3年の取組みの中で、ともに話し合い、アイデアを得て、実行する文化が定着していった。
二つ目の事例は、ウィニペグ・ヘルス・サイエンスセンターでの取組みである。
医療のプロ集団であり、優れた多くの経験をしている人たちばかりだった。
ただ、組織は縦割りで、緊急時への対応力を上げていくために、さらなる連携が重要なテーマであった。
4日間のメインのセッションを行い、その間にコーチング・アワセルブズを組み込み、ラーニング・ネットワーク、変化へのチャレンジチームをつくっていった。
200人のマネジャーが46のチームに分かれて、継続的な対話を重ねた。内省と対話を通じて組織の中で何が機能し、何を変えなければならないかを考え、変化をより早く動かすことが出来るようになった。
持続可能な文化へシフトするためには、小さなシフトという視点で考え、リーダーシップ開発にフォーカスし、強いプロジェクトマネジメントを行い、コミュニティをつくる。そして、仕事をつくるのではなく、今の仕事をより良くし、長期的にシェアされたビジョンを持つことが大事だと語ってくれた。
■ 海外プレゼンターからのインプリケーション
彼らに共通していたのは、組織開発、組織変革という文脈の中で、コーチング・アワセルブズを有効に結び付けている点である。変革とは、関係性を変えることであり、関係性に力を与えることである。そのためのプログラムを設計する中で、内省と対話を通じて、コミュニティ、コミュニティシップを生み出していくことが、組織変革のエンジンとなっていく。各国がコーチング・アワセルブズの思想をもとに、それぞれの手法をもとに、多くの人たちの心からの変革を起こしていることに、あらためて勇気と喜びをもらえたセッションであった。
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