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コラム・日記

佐藤 将 連載コラム「ニッポンが世界を元気にする」⑬ 2017年5月8日

13. いつかいた森

「森と聞いてあなたが思い浮かべる森は?」
――この世界、たくさんの森があるけれど、あなたが思い浮かべる森はどこの森ですか?その景色、その空気、そこにいた感覚を思い出してみてください――

昨秋、はじめて『森のワークショップ』に参加する機会を得た。
集合場所は、京王線で新宿から50分の長沼という駅。
(意外に近いな)
集合時間ピッタリに着くと、参加者の皆さんが待っている。
(、、、)
しばらく田んぼの中の畦道を通ると、小さな祠のある神社に着く。
山の麓、森のエントランス。
そこで荷物を下ろして体操。

その時、森からの風が、少しひんやり湿った風が頬を撫でる。
(あっ!)
(どこかで感じた感覚、、、)
(そうだ!子どもの頃によく遊んだあの森の感覚、、、)
その時、その頃の風景や友達の顔が、数十年ぶりに、思い出される。
(こんなに早くからデジャブ感、、、)
先が思いやられる「森の世界」。

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日本という国は、
テンプレ的には、海に囲まれた「島国」。
東の果て、大陸からの流浪人(refugees)が集まった「隠れ里」。
明治以降は、海外との通商で稼ぐ「海洋国家」となった。

けれど、ワークショップ主催者の小野さん(一般社団法人森と未来 代表理事)によると、国土の7割以上が森林。森林率ではトップ3に入る、実は世界有数の「森の国」であるという。
(確かに山林地帯が多く、川は急流だな、、、)
(日本人は、本来、森の民族だったのか、、、)

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<再び森>
森に入ると、五感を一つずつ開くワークから始まる。
(鳥のさえずりが5重奏になる、、、)
(風の音が聞こえる、、、)
(懐かしい匂いが、、、)
(空気を肌に感じる、、、)
そして、身体中の神経が安らいでいくのがわかる。

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日本の森は、
確かにドイツの森ほど、暗く深淵で魔法使いがいそうな雰囲気はない。
英国の森ほど、朗らかで妖精が出てきそうな気配もない。
米国の東海岸に比べたら、四季の抑揚は滑らかだ。

けれど、そのほどほどの四季感と、
雨季や台風による豊かなウエット感が、
何か神秘的な雰囲気を与えている。

森羅万象、八百万(やおろず)の神信仰は、
そんな風土から生まれたのだろう。

「神々と共にある森」。

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<再び森>
森の中を歩きながら、様々なワークが用意されている。
繊細なこころ配りされたデザイン。
自然に、いや自然以上に、「森の世界」に入っていく。
(うん、週末のハイキングとは明らかに違うな)

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日本人が持つ特性の一つに、
サブトル(Subtle)なものへの感度の高さがある。
微細な変化、見えない機微(Kibi)に対して、
繊細(Sensitive)で、鋭敏(Keen)な感覚(DNA)がある。

侘びさび文化だけではない。
ものづくりにおいても、以前、その力は十分に発揮されてきた。

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<再び森>
森の中を歩いていると、
別の世界に放り込まれていく感覚がある。
この世界とあの世界の狭間の世界に。
(あー、ここは結界なのか)

自分の中の潜在意識のゲートが開かれていく・・・

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最近、グーグルをはじめとしたシリコンバレー企業で、マインドフルネスやEQマネジメントが人気だという。管理職研修もそのウエイトが大きくなっているという。
10年前にはあまり聞かなかったエンパシー(感情移入)をはじめ、レゾナンス(共振・共鳴)からコンパッション(共苦・同苦)まで、センスする力=「センシング力」が、新しいリーダーシップの中核となっている。恐らく、脳科学的に、センシングを使う脳のCPUが、思考(シンキング)だけに比べて、格段に大きいのであろう。

本来、それは日本人が、圧倒的なアドバンテージを持っていた部分。
それが、いつの間にか、インダストリー社会の中で分断され、MBO(目標管理)を達成するパーツ(部品)として思考(シンキング)優先になってしまってはいないだろうか。

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昨年、東京で開催されたRRT(リフレクションラウンドテーブル)世界大会。

その初日のハイライトは、内省と対話に関するクロストークであった。登壇者は、リーダーシップ論の権威でRRTの生みの親のお一人ゴズリング教授、シリコンバレーでも禅や瞑想法に関して数多くの講演経験を持つ藤田一照禅師、そしてこの森のワークショップを手がけておられる小野なぎささん。弊社小森谷さんの進行で進む。

最初、ゴズリング教授が、リフレクション(内省)とは、思考の蝶つがい、紙を折る感覚に近い。「日本人の内省力には、「折り紙」文化が影響しているのでは?」と問う。

その難しい問いに、藤田禅師が間髪入れずに応える。
「昔、日本の看護婦さんが、サンフランシスコのある病院に短期体験でいらした時の事。一人の男性患者が、病気で自暴自棄になって大暴れしていたという。言葉も上手く通じなかった彼女は、その彼に近づき、持っていた紙で、折り鶴を折ってみせたという。その瞬間、彼は、『マジックだ!ミラクルだ!』と言って、周囲の人に見せて周り、自然に穏やかになった」との事。

それを聞いた小野さん。「人類が森で生活していた時代は、人も生物も木々も、すべてが繋がっていた。現代になって都会で生活していると、ノイズ(訳:雑音、固定観念)によってディスコネクトされてしまっている。だから、私たちは新たに繋がるのではなく、ただその昔持っていた繋がりを取り戻す、リコネクトするだけでいいのだ」と。

紙という2次元の世界が、折り紙になって3次元に、そして人の心を介してさらに高次元に繋がった瞬間。

もし、私たちが、内省や対話を、思考(シンキング)だけでなく、「センシング」で捉えられれば、「我が社の問題はコミュニケーション」という企業は大幅に減るだろうと思う。

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<再び森>
森を散策した後、囲炉裏のある古民家で、絶品の焼鳥や麦とろ飯を食す。素材も素晴らしいけれど、こちらの五感も開いているので、格別に美味しく感じる。
その後、木の香り溢れるロッジで、対話セッションを行う。普段、都会で行う対話(どちらかというとシンキング系の対話)とは違うセンシング系の対話。

その後、16時現地解散。17時前後には都心に戻る。
少し次元の違う世界にいたせいか、とても長く充実して感じた1日。はじめて出会った方々と共に語らいながら帰路につく。

その日、最寄り駅のホームに降り立った時、まだ明るい夜空に一番星が輝いていた。

予想していなかったよ。21世紀の未来の革新(ルネッサンス)の鍵が、いつかいた森の中にあったなんて -

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――あなたが思い浮かべた森はどんな森でしたか?――

注)文頭、文末の問いは、一般社団法人森と未来さんのセミナーから特別に引用させていただきました。


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